優しいホモたち

この辺にぃ、急に虚しさを感じる人たち、来てるらしいっすよ!

蒔いた種

部活にお邪魔させてもらってきました。

雰囲気がいつもより明るい。
僕の気のせいだろうか?
新しくそれぞれの生活がまた、切り替わって、みんなの気持ちも一新したせいもあるだろうか?
たぶん、きっとそうだ。新しく入ってきた、わくわくどきどきが、きっとそうさせてくれている。

この新しい風が、このあとどのように吹く風を変えていくだろう。

大学自体の雰囲気が新しく入ってきた子達が感じる、初々しい思いや気持ちがそうさせているように、僕には見えた。

練習部屋へ行こうと足を進めていると、後輩ちゃんが現れる。せんぱいじゃないっすか、オッス!この前とは雰囲気がやはり違う。どうしたのか聞くよりも早く、「先輩!聞いてくださいよ、今日の部活に新入生が何人来てくれたと思います?」嬉しそうに彼女は僕を部屋に案内しながらこちらを振り向く。

なんと、32人も来てくれたんですよ!

なるほど。
そうか。そりゃ良かった。

なんだ。
簡単なことじゃないか。
こうして、人が集まってくれる、やってきたことに報いるように、新しい季節に、新人たちがそうして、やってきてくれるだけで、甲斐がある。気持ちも救われるし、嬉しいと思うのだ。

僕の気持ちもなんだか救われた。
その30何人のうち、どれだけが入ってくれるかは分からないが、こうして、来てくれたという事実は変わらない。

何よりも、後輩ちゃんが嬉しそうにしている。

僕はその顔が見たかったのだから。
つい安堵感から、えへへ、と笑ってしまった。

えへへじゃないですよ。

思った通りの相づちが笑顔と共に返ってくる。
そのテンポが心地がいい。この心の伝わる感じに僕は今まで甘えていた。でも、たまにこうして、会うときくらい、甘えても、きっとバチは当たらないはずだ。

ごめん、ごめん。
これで俺も、ようやく安心して君らを手放せるよ。
本当に良かった。

蒔いた種が、まだ芽を出していなかった。
それが今、ようやく芽生えてきたのだ。

後輩ちゃんも嬉しそうだった。

確かに問題は山積みだ。
これからも、たびたび、問題は起こるだろう。
でも、もう僕がでしゃばる必要はない。

こうしてちゃんと、芽が出てきていた。
蒔いた種はしっかりそこに植わっていた。

それが確認できて僕は心から嬉しかった。
僕のやったことは、間違いだらけで、後悔だらけの、失敗ばかりの歩みだった。

だけど。部屋に入った僕の耳に、後輩ちゃんがやかましく新入生を案内している声が聞こえる。
かつての僕が教えたように、後輩ちゃんは、入ってきた新入生をそれは楽しそうに、面倒を見ている。

すごいやつが来たんですよ!
ほんと、ありえないやつなんです。面白くって!

僕が通路に出ると、後輩ちゃんがウキウキが止まらない勢いで僕に嬉しさを表現してくる。
どんなやつなんだ?そう聞きたい気持ちよりも、先に、「さ、水入らずで楽しみな」と一歩さがって 守ることにした。
卒業した僕がでしゃばって後輩ちゃんが新人たちと過ごす時間を奪いたくない。
僕もそうやって、救われたのだ。

彼女は分かってますよという顔でうふふと笑って僕を送り出す。相変わらず、僕の方が育てられている。

後輩ちゃんともっと話したかったが、それはまたの機会にすればいい。今日は、そして、今回の新歓ではめいっぱい、新人との関わりを楽しんでもらいたい。

それからでも、また話はできる。

彼女の笑顔がまた見れて良かった。
それに、何人もこの部活を見に来てくれて、それも嬉しかった。

もう、大丈夫だろう。

後輩ちゃんを愛おしく思う気持ちは変わらないが、僕がこれ以上でしゃばる必要はないと確信した。
それよりも、僕は僕の目の前の、自分自身の進む道とこれからは向き合うべきだ。

僕の蒔いた種は、悪いばかりのものでもなかった。