優しいホモたち

この辺にぃ、急に虚しさを感じる人たち、来てるらしいっすよ!

後輩ちゃんが「せんぱぁい」と呼ぶ理由

せんぱぁーい

今日、教室に居るのが息苦しくて、タバコルームへ逃げ出す途中で、同じ学科の先輩に会ったときのこと。

ウキウキが消えてしまいそうで、僕は、もっとこのボロボロカンナとか、お粗末な所業の数々がどうしたらもっとよくなるのか。それをひたすら考えたい。

そんなとき、ふと、ハイライトを愛煙してる先輩に廊下で会った。

せんぱぁい!

どうやってカンナの裏側うまくやってんですか?
普通は何日くらいかかるんですかぁ?

後輩ちゃんの常套手段を応用して先輩に問う。
僕、もっとうまくなりたいんです!楽しくやりたいんですよ!
後輩ちゃんが僕に「せんぱぁい」と声をかけるとき、彼女もそういう気持ちだったのだろうか?
同年代や、今の自分のやり方とか、もっとどうしたらうまくやれるのかなぁって、考えたとき、素直に頼ってくるあの感じ。

先輩は笑って答えてくれた。
何日もかかってる人もいたよ、こういう道具を使ったりしてたよと。

…僕も後輩ちゃんにとって、そういう先輩であれたんだろうか。答えを求めて、というよりは、どうやってうまくやったんですか?どうやって乗り越えたんですか?そう聞くことで、自分が励まされる。励ましてもらいたくて、せんぱぁい、と問う。

タバコルームへ行くと、別の学科の先生がいた。
以前会ったことがある、面倒見の良さそうな、バイオリンの修理や製作の経験のある先生だ。

火がないことに気づいて、先生を頼る。

「先生、もしよかったら、火を貸してくれませんか?」

先生は笑ってどうぞどうぞ。もちろん、とライターを貸してくれる。

お礼を言ったあと、先生から今バイオリン科では何をしてるの?と聞かれ、すかさずカンナのことを逆に聞き返す。
今、カンナの裏を平面出してて…ぼこぼこで…

すると先生は答えてくれた。
最終的には、仕事で使うカンナも、途中ではその平面直さないよ(笑)と。落としてもそのまま使ったりするし、でも!最初は頑張りな、最初はね?と。

はい!と元気よく答える僕。ありがとうございます!と自然と顔が笑ってた。安心したからだ。

後輩ちゃんに「ありがとうございます!」って言われたときと同じ気持ちだ。

なんだかなぁ。
後輩ちゃんが、僕をいろんなことに誘ってくれたり、僕をちょくちょくからかいにくるのも、この、安心したからという気持ちからなのかな。

先輩と話してると楽しいんです!

って彼女は伝えてくれたことがある。
僕は…不安そうな君がどうしても放っておけなかっただけだ。今の僕みたいに、これからどうなっちゃうんだろう?みたいに、なんだか不安な気持ちってよくわかる。

新しい場所に、新しい環境、新しい関係に…。
将来のことに…。

そんなの心配する必要ないぜ?だってさ!

僕が過ごしてきた時間を語るのです。
大丈夫だったさって。
僕がさきほどのように、先生から「カンナなんて途中で直して使わないよ?」と言われたときみたいに。実際それで成り立ってるから心配なんかすんなよ!信じられないって言ったって、俺が生きた証拠じゃねえか!ってね。

あっ、なんだそっかあ。怖くないじゃん!

自信満々で生きてるその人の姿を見れば不安なんて吹き飛んでしまうものだ。

そうだ。

怖くなんかないよ、大丈夫だから。
その気持ちで、後輩ちゃんにはずっと接してた。

でも、今の僕はまた不安がいっぱいになってる。
受験を乗り越えたとき、大学を乗り越えたとき、これで大丈夫さ!と作戦を立てることが出来たけど、でも、社会を今度はどう生き抜こう?
これにはまだ答えを出せてない。

まだ、時間がいる。
そして、先輩として。後輩ちゃんとの関係が、今までと変わることを恐れてもいる。大丈夫さ!と示す側の立場から、今度は“共に並んで”大丈夫さ!と言い合う関係になる。

僕はまだ、社会を生き抜いたわけじゃない。
これからどうするか、どうしてるのか、その真っ最中だ。

その等身大の僕を見て後輩ちゃんはなんて思うかな。

なんて考えてみると、案外と変わらないと思う。
先輩が今さら情けない姿を見せたところで、留年はしてるし、授業はサボるし、社会へ反抗してるんだ!と言い張ったりと、散々なことをして見せていた僕のことを彼女はそばで見ている。

僕が言い訳ぎみに、
「そういう思春期の生徒も学校へ行けばいるかもしれないだろ!」

と言うと、彼女はきっぱりと
「そんな面倒くさい生徒嫌ですよ」

だから今の僕の姿を見たところで、代わり映えなく、相変わらず面倒くさいですね、先輩。みたいなことを言うだろう。

…この前もそうだったけど、後輩ちゃんってあっさりしてるんだよなぁ。そのわりに僕のあげたプレゼントとか大切に持ってたりして、そういうところが可愛いんだけど。

後輩ちゃんの方が大切なことをよく分かってるんだよね。僕は彼女と関わることで、そういうことを忘れずにいられてるなあと本当に思う。

後輩ちゃんも後輩ちゃんなりに、この鈍感な男に何か思うところがあるのかなあなんて。
今の僕は“後輩”としての立場を利用することで思う。