優しいホモたち

この辺にぃ、急に虚しさを感じる人たち、来てるらしいっすよ!

いたわり、ねぎらう

後輩ちゃんに今度どんな顔して会おう?

今日は作業道具のノミを仕立てていた。
でも僕の頭の中は、後輩ちゃんのことでいっぱいだ。

あーもう、なんでこんなに頭から離れてくれないんだ。

ノミを砥石に当てて平面を出しながら悶々とする。
作業に集中しつつ、ずっと頭のどこかに昨日のことがつっかえている。

いっそ怒ってくれたら楽なのに。
先輩!どうしてきてくれなかったんですか!と。

そうしたら僕はその理由を懇切丁寧に話して…
いやいやそれじゃ僕が楽になりたいだけじゃないか。

こうなるともうひたすらに情けない男である。

これでしばらく後輩ちゃんのご機嫌は斜めだろう。
彼女は普段、あっさりしてて面倒くさがりなくせに、こういうことになるとプラトニックで、急に乙女なことを言い始める。

というか、ピュア、なのだ。
お父さんが仕事で何かの発表会に来てやれず、娘からいつも来てくれなかった!と愛想をつかされるような気持ちだ。

また次なんて言って、どうせ来てくれないんでしょ!
今さら白々しく来てくれたって全然嬉しくないから。

みたいな。

ぐさりと心に刺さる。
そんな娘を喜ばしてやるには…

食べていけなくてすまなかったときちんと謝る。
だってそこにいてほしかったんだから、それを謝る

そして次に居てほしいと思う場面で、同じことを繰り返さない!

次…
次は12月の定期演奏会だ。
これが最後の発表会で、彼女たちが主役の大舞台。
ずいぶんと間が空いてしまうな…

それまでの間にちゃんと後輩ちゃんにその気持ちを伝えなくては。こいつはちゃんと次は来てくれるって思ってもらおう!
だいたい、そもそも僕は最後のその最後で彼女を思いっきり褒めちぎってやろうと、この前話したときから決めていたのだ。

だからって最後の最後まで、よくやったねとか言わず、労うこともあえてしないというのは、冷酷だと思われても仕方ない…。
僕がそういう生き方をしてきたからって、誰もがそういう風に最後の最後まで突っ張ったまま生きてるわけじゃない。

もう少し、合間合間に労うことをしてみよう。
それくらいしてもいいんじゃないのか?

確かに最終目標は定期演奏会を無事成功させることであって、今回の新歓がたとえその足掛かりなのが事実だとしても、成功は成功だ。そこまで息を抜かずに、走り続けろなんて、厳しすぎるんじゃないか。

うーん。

…自分のこと、そんなに厳しいと思ったことなかったし、大してよくやってないと思ってたんだけど、何だろう。すごいストイックなことをしてるじゃないか。

この調子で人のこと見てたらそりゃ、厳しいな。

後輩ちゃんにも、もっと優しい目で見れたら、今回みたいなことしなかったかもしれない。

だってあいつら、すんごい頑張ってる。
僕にだって労る気持ちがないわけじゃない。
むしろ、彼女らを信じてるからこそ、労ってあげたいからこそ、やりすぎた。

もうちょっと途中途中で、休憩ポイントを用意して息を抜けるところも必要なんだね。

…はー。なんだこの男は。
普通の人間はたいてい、息抜きを間に挟まないとへたれちゃうでしょうに。というか、僕がたびたび虚しくなっちゃってたのだって、そうやって無理させてからじゃないのか。

もう遅いけど、まだ遅すぎるわけじゃない。

後輩ちゃんのこと、もっと労ってあげよう。最後の最後まで、とか息苦しいことやってないで、彼女よくやってんだからさ。

でも彼女との関係が実は、怖かったのも事実だ。
こんなに人を想ったことなんてないし。
だから関係がなくならないようにって、願いすぎたのもあったのかも。
それで最後の最後までなんて、気合いいれちゃって空回りしてさ。後輩ちゃん、そんなところまで絶対望んでないでしょ。余計なお世話だってのさ。

だからちょっとちょっと、労る気持ちを持って、それを行動と態度で示してみよう。

そして本当の最後には褒めちぎってやるんだ。
よくやったな!って、思いきり頭を撫でてね。