優しいホモたち

この辺にぃ、急に虚しさを感じる人たち、来てるらしいっすよ!

心の中のこども

合奏中のこと。

セカンドトップであった僕の相方であるファーストバイオリントップの彼は、良い意味でピュアな男だった。

指揮者の確認事項に、返事は「へい!」
はいじゃなくてへい。気合いを入れてへい!と返すのです。彼なりの理解したよ、そして一生懸命に取り組むぜ!という表現なのです。

そして何より彼を一番象徴するのは「もう一回もう一回!」出来なかったり、理解できないことがあったり、また単純に失敗したときに、彼はそう言う。

決して、ん?なんか違うぞ?なんだ?という違和感を彼はそのままにしなかった。たとえそれが、合奏中であっても、彼は進行を止めることよりも、自分が理解していないことが後々もっと進行を止めることになると分かっていたからだ。

聞くは一瞬の恥、聞かぬは一生の恥。
みんなの前で、ここわかんないんだけど?となぜ、進行を止めてまで言う必要があるかと言えば、ああ、あいつはここがわからないんだな!とみんなが分かってることは、想像以上に、お互いの助けになるからだ。

僕たちは、はじめ代をとってオケを運営することになったとき、とてもじゃないが運営できるようなスキルがある人ばかりではなかった。
むしろ、人と話すのは苦手だし、マイペースだし、何をして良いのかわからない、わからないことがわからない!状態の人たちばかりだった。

それを出来る人たちは、わからない人を置いていきはしない!約束する!助けるから、一緒にやっていこう!

彼らはできない人を見捨てるのではなく、育てることをしようとした。力を貸して、協力することを選んだのです。

だから僕は彼らには感謝しているし、頭が上がらない。あの時は本当に世話を、迷惑をかけた、すまなかった、ありがとうと本当に思う。
できない人を、絶対に見捨てない、私たちが助けて代を乗りきると、口先だけでなく、行動と共に、それを彼らは証明してくれた。

とにかく、そんなバックグラウンドがあって、隊長であるファーストの彼が進行を止めたとしても、彼のことを足手まといとか、役に立たないとか、ふざけておちょくることはあったが、本気で彼を貶めたり、中傷したりする人はいなかったのです。

それどころか、彼が進行を止めることにより、彼がどんなところでつまずくのか?実際の演奏、体験の中でどんなことを気にしているのか?それがよくわかったために、合奏が終わったあとは、出来る人たちがやってきて、じゃあどうする?何がわからないの?と解決策を練っていく。

そして次回に挑む。
みんなが見守るなか、彼は学んだことを発揮して、次々に出来なかったことを、この前までみんなの前で、進行を止めてまで理解していたところを越えていく。

それは見紛うことなき、みんなと力を合わせる、協力と共存の姿そのものだった。

そうだ。こうやって、出来ないことは補いあっていけば、僕たちは共存できる。出来なかったことも、壁も、問題も越えていける。

分からないことは分からないとはっきり言い、決して仲間は見捨てないこと。
心の中のこどもとは、その素直でピュアな部分のことだ。

そして、何よりもそうして進んでいくこと、越えていくことは、なぜだか、気持ちがよかった。
ふてくされていじけているよりもずっと気分がよいものです。